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遺言事項

遺言事項  

遺言事項とは、民法・その他の法により特に「遺言によって成し得る」旨が定められた事項です。
遺言には「兄弟仲良く・・・」などと書くのは自由ですが、遺言の内容に法的効果を認められる遺言事項を列記すると、次のとおりです。

 

1.身分上に関する遺言事項  

(1)認知(781条2項)
「何某は遺言者と何某の間の子供であるから認知する。」などの記載のある遺言です。
次のような文言で表現されます。

遺言者○○は、次のとおり遺言する。
1.住所○○○○氏名○○○○は、遺言者の子であるから認知する

この認知手続きは、遺言が効力を生じたとき(遺言者の死亡時)、遺言執行者は戸籍法に従って、市町村長への届出が必要です。(戸籍法64条)従って、必ず遺言執行者が必要です。



(2)未成年後見人の指定(民839条)
未成年者に対して最後に親権を行う者が、遺言で後見人を指定した内容のものです。
成年後見人に指定された者は遺言の効力発生と同時に後見人に就職します。
後見人就職した者は、10日以内に市町村長に遺言の謄本を添付して後見人届出書を提出しなければなりません。(戸籍法81条)



(3)未成年後見監督人の指定(民848条)
成年後見人を指定できるものが、遺言で未成年後見監督人を指定した内容のものです。


相続に関する遺言事項  

(1)推定相続人の廃除・取消(民法892条・893条)
「相続人何某は遺言者を虐待し、若しくは重大な屈辱を加えたので、遺言者は何某を推定相続人から廃除する。」旨の記載のある遺言です。次のような文言で表現されます。

遺言者の長男○○○○が、遺言者を叩き殺してやるなどの暴言を吐き、人前で罵倒するなど侮辱を繰り返し、暴行を重ねたため遺言者は身体に傷を受けた。
このように長男○○○○が遺言者を虐待し、重大な侮辱を加えたので、遺言者は長男○○○○を遺言者の推定相続人から排除する

廃除の効力は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をし、家裁から「廃除する」旨の審判を受けて、はじめて効力が生じます。
従って、この遺言の執行には、遺言執行者の執行行為が必要です。



(2)相続分の指定(民法902条)
遺言者は、法定相続分と異なる内容の相続分を指定できます。
この指定があると、その指定があった部分について、法定相続分の割合は適用されず、遺言で指定した割合の相続分により相続割合が決められます。

指定されなかった共同相続人は、指定された相続分を除いた残余の遺産を法定相続分で相続します。 これが遺言による相続分の指定です。

(遺言による相続分の指定)
第902条 被相続人は、前2条(法定相続分)の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
《改正》平16法147
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前2条の規定により定める。

  • 抽象的割合による指定
    相続人に対し、法定相続分と異なる相続割合を分数的割合をもって抽象的に指定する方法です。

    遺言者は、各相続人の相続割合を次のとおり指定する
     妻 ○○○○( 年 月 日生)が○○分の○
     長男○○○○( 年 月 日生)が○○分の○
     長女○○○○( 年 月 日生)が○○分の○

  • 特定財産による指定
    不動産・債権(預貯金)・株券など、相続財産の種類を特定して相続割合を指定する場合です。次のような文言で表現されます。

    遺言者は、各相続人の相続割合を次のとおり指定する
     妻○○○○と長男○○○○が下記不動産を2分の1の割合で共有する。
              (不動産の表示)



(3)相続分指定の委任(民法902条)
遺言者が自ら相続分の指定をせず、第三者にその相続分の指定を委任することもできます。 

遺言者は相続人全員につき、その相続分の指定をすることを次の者に委任する
 住所
 職業
 氏名
 生年月日



(4)特別受益の持戻しの免除(民法903条)
民法は、遺贈・贈与の特別受益を定めています。
この相続財産の計算は、被相続人の死亡時に有した財産価格に、特別受益を加えたものを相続財産とみなし、遺贈又は生前贈与の価格を控除(持ち戻し)して算出しますが、遺言によって法の定めと異なる控除しないことが許されます。
つまり遺言で、「遺贈・生前贈与したものを相続財産に組み入れなくても良い」旨の意思表示もできます。
次のような文言で表現されます。

遺言者は次のとおり相続分を指定する。 

        (以下、指定内容を記載)

但し、相続人AにはA所有建物の敷地を贈与してあるところ、前項により相続分を算定すると相続分を受けられないことになるので、A建物敷地を相続財産に算入しないことにする。



(5)遺産分割の方法の指定(民法908条)
遺産分割の方法とは、遺産を各相続人にどのような形で分割取得させるかの方法です。
遺産分割方法の指定は、一般的には次のような文言で表現されます。

遺言者は、遺言者の妻○○○○は長男○○○○と同居していること、次男○○○○は独立して生計を営んでいることなど現実の生活状態を考えて次のとおり遺産分割の方法を指定する

 妻○○○○には○○銀行○○支店の定期預金、普通預金
 長男○○○○には長男が居住している下記不動産

        (不動産の表示を記載)

 次男○○○○には次男が居住している下記建物及びその敷地の賃借権

        

        (建物の表示を記載)

 その他の財産は、上記2名で平等に分割する。

分割方法は、一般的に現物分割・価格分割・代償分割・共有による方法その他の態様に分類されます。

  • 現物分割
    現物有姿のままで書く相続人に分割する方法です。
  • 価格分割
    金銭に換価し、相続分に応じて分割する方法です。
  • 代償分割
    遺産の全部又は一部を一人又は数人に取得させ、その代償として遺産を取得した者が他の相続人に債務を負担する方法です。
  • 共有による方法・その他



(6)特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言
この遺言は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の文言で、次のような文言で表現されます。

遺言者は長男の○○○○に下記不動産を相続させる

          (不動産の表示)

<「相続させる」という文言の法的性質>

遺言書の記載から、明らかに遺贈或いは遺贈と解すべき特段の事情が無い限り、「遺産分割の方法の指定」であり何らの行為を要せず直ちに相続により承継されます。

つまり、相続人は遺産分割協議又は家庭裁判所の手続きを経ることなく当該遺産を確定的に取得します。
従って、この場合は遺言執行者は執行行為を行う余地はありません。

判例(最三小判平成7年1月24日判時1523−81)は、

遺言執行者が選任されている場合でも、特定の不動産を「相続人○○に相続させる。」旨の遺言が有るときは、その登記申請は相続人○○が単独で所有権移転登記申請ができ、遺言執行者には代理権や遺言執行としての登記手続きの義務は無い。

としています。



(7)遺産分割方法の指定の委託(民法908条)
遺言者が自ら分割方法を指定せず、第三者にその分割方法の指定を委託するものです。

遺言者は遺産分割の方法を定めることを下記の者に委任する
 住所
 職業
 氏名
 生年月日



(8)遺産分割の禁止(民法908条)
遺言者は、遺言によって最長、死後5年間に限り、遺産の分割処分を禁止できます。
次のような文言によって表現されます。

遺言者は遺産全部についてその分割を相続開始の時から5年間禁止する。



(9)共同相続人の担保責任の減免・加重(民法914条)
民法は、遺産分割により各相続人が取得する遺産について、各共同相続人は、他の共同相続人に対して、相続分に応じて、売主と同じ担保責任を負い(民法911条)、また、他の共同相続人が分割によって取得した債権についても相続分に応じて、債務者の資力を担保し(民法912条)、且つ担保責任のある共同相続人中に償還する資力の無い者があるときは、その償還不能額は他の相続人がその相続分に応じて負担する(民法913条)ことと定めていますが、遺言者は、遺言によって、この担保責任の範囲を変更することができます。

次のような文言によって表現されます。

遺言者は遺産分割の方法として所有する下記の土地建物を長男○○○○が取得し、他の財産は妻○○○○と次男○○○○及び長男○○○○の3名で平等に分割取得するよう指定する。

 ただし、分割取得した財産及び債務者の資力についての担保の責任は一切長男の負担とし、妻及び次男は担保責任を負わない。

          (土地建物の表示)

この「ただし」書の部分が、担保責任の減免加重の文言です。



(10)遺贈の減殺の順序・割合の定め(民法1034条)
遺留分を侵害した遺贈に対しては、遺留分権利者は受遺者に対する減殺請求があります。

民法は、この減殺される遺贈について、「遺贈はその目的の価格の割合に応じてこれを減殺する。」と定めていますが、遺言者は遺言によってこの定めと異なる内容の定めをできます。

例えば、遺贈したもののうちAの遺贈から先に減殺する等。
次のような文言によって表現されます。

遺言者は所有財産のうち、下記土地建物を妻○○○○に遺贈し、その余の財産全部を長男○○○○に遺贈する。
次男○○○○に対しては、同人が放蕩に身を持ち崩しているので何物も遺贈しないが、若し同人から遺留分減殺の請求があったときは長男に遺贈した財産について減殺し、妻に遺贈した部分からは減殺しないものとする。

        (土地建物の表示)


相続財産の処分に関する遺言事項  

遺言者は、遺贈(包括遺贈・特定遺贈)や寄付行為などにより相続財産の全部又は一部を処分することができます。(民法964条)
但し、法定相続人の遺留分は侵害できません。

(1)遺贈(民法964条)

遺贈は、遺言者がその相続財産の全部又は一部を受遺者に無情で譲与することを文言とした遺言です。(民法964条)

<遺贈の効力>
遺贈の効力は、遺言者の死亡と同時(遺言の効力発生時)に遺贈された目的物の権利が法律上、受遺者に直接移転することです。
遺言執行者の意思表示の法律行為を要しないばかりか、受遺者の意思も関係なく、その目的物の権利が受遺者に移転します。
この効果を「物権的効力」といい、判例・通説により認められています。

<遺贈義務の履行(執行行為)>
権利移転の効力を実現させるには、対抗要件である登記・登録・占有移転・権利変動の通知等の法的行為、又はその物の管理・保管・引渡し等の事実行為が必要です。

そして、この権利移転の履行義務は、被相続人(遺言者)の相続人にあります。
相続人が数人いる場合は、全相続人が履行責任を負います。

しかし、往々にして相続人間の利害対立から履行が困難なため、法は遺言執行者制度を設け、その義務の履行を遺言執行者の権限としています。(民法1012条・1013条)

従って、遺贈の遺言がある場合で遺言執行者がいるときは、遺贈義務の履行は遺言執行者の専権事項となり、遺言執行者によってのみ行われます。

包括遺贈
包括遺贈とは、遺贈の目的物の範囲を遺言者が相続財産の全部又は相続財産に対する一定の割合をもって表示し遺贈する遺言です。

遺言者はその所有する財産のうち3分の1を遺言者の長男の妻○○○○に遺贈する。

この包括遺贈の効果として、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することとなります。(民法990条)

➁特定遺贈
特定遺贈とは、遺贈の目的が特定の財産や個々の物件を指定し、これを何某に遺贈する旨が記載された遺言で、次のような文言で表現されます。

遺言者はその所有する下記土地を受遺者住所○○○○氏名○○○○に遺贈する。
               記
             (土地の表示)


(2)財団法人設立のための寄付行為(民法41条)
財団法人とは、公益を目的として出資された財産を中心として、これを運営する組織であるが、その内容は寄付行為によって定まります。
遺言によっての寄付行為は、遺贈に関する規定が準用されます。


(3)信託の設定(信託法2条)
信託とは、財産権の移転その他の処分をし、他人(受託者)をして一定の目的に従いその財産の管理又は処分をさせるものです。
次のような文言によって表現されます。

遺言者は遺言者の長男○○○○( 年 月 日生)が年少で、まだ財産を管理する能力が十分でないので、遺言者の所有する下記不動産及び現金を下記の各受託者に対し下記条項で信託する。


遺言執行に関する遺言事項  

(1)遺言執行者の指定・指定の委託(民法1006条)
遺言者は、遺言で1人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができます。(民法10061条)

  • 遺言執行者の指定

    遺言者は次の者を遺言執行者に指定する。
     住所
     職業
               氏名
                 年  月  日生

  • 遺言執行者指定の委任

    遺言者は遺言執行者の指定を次の者に委託する。
     住所
     職業
               氏名
                 年  月  日生


(2)遺言執行者の職務内容の指定(民法1016条但書)

  • ”任権
    遺言執行者は、止むを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることはできない(民1017条)ことになっていますが、遺言者は遺言で、これと異なる内容をさだめることができます。
  • 共同遺言執行者
    共同遺言執行者が数人いる場合、その執行方法は多数決によります。(民1017条)
    遺言で、これと異なる執行方法を定めることもできます。



その他の遺言事項  

(1)遺言の取消(民法1022条)
遺言者は、何時でも、遺言の方法に従って、既になした遺言の全部又は一部を取消すことができます。(民1022条)

次のような文言によって表現されます。

遺言者は、 年 月 日記載の遺言を全部(又はそのうちの○○○○に預金を遺贈した部分)を取消す。



(2)祖先の祭祀主宰者の指定(民法897条但書)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、相続財産とは別に祖先の祭祀を主宰すべき者が承継することになっています。
この承継者は、被相続人の指定があればその者が、なければ慣習により、慣習が明らかでない場合は家庭裁判所が承継者を定めることになっています。
被相続人が祭祀承継者を指定する方法に制限は無く、遺言によっても指定できます。

次のような文言によって表現されます。

遺言者は、祖先の祭祀を主宰すべき者として下記の者を指定する。
              記
 住所
 氏名
             年  月  日生



(3)生命保険金の受取人の指定・変更(商法675条)
生命保険契約において、保険金受取人の指定・変更を保留している場合、保険契約者が死亡する時まで(死亡と同時に確定する)契約者は保険金受取人を指定又は変更できることになっています。(商法675条)
保険金受取人の指定・変更については、遺言によってもできると解されています。
この遺言は、その指定・変更を保険会社に通知する必要があります。


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