遺産分割協議
遺産分割協議
遺産分割とは、相続開始後、共同相続人の共同所有に属している相続財産を、各共同相続人に分属させる手続きです。
被相続人が亡くなると、その人が所有していた財産は、相続財産となり(民法898条)、この共有財産を共同相続人の全員が話し合いによって具体的に誰が何を相続するかを決めるための協議が遺産分割協議です。
相続人・相続財産が確定すると、具体的な遺産分割協議をします。
遺産分割協議に無資格者が含まれていたり、有資格者の一部を除外すると、その分割協議は原則として無効になります。
相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権
遺産分割協議の終了後に、認知の訴え(787条)によって共同相続人が現れた場合、認知の効果は出生に遡る(784条)ので遺産分割協議は無効ということになりかねません。
そのため、民法910条は、遺産分割協議の効果を維持しつつ、新たに現れた共同相続人の利益を保護しています。
遺言がある場合
被相続人が遺言を残し、個別具体的に「○○の土地は△△に」などと相続方法が定めてある場合(特定遺贈)は、これに従った遺産分割を行い、遺産分割協議で決める必要はありません。
しかし、遺言があっても
- 相続分の指定があるだけの場合(包括遺贈)
- 遺言から漏れた財産がある場合
- 共同相続人全員が遺言を使わないことの合意がある場合。
- 遺留分滅殺請求された場合
は、遺産分割協議によります。
なお、遺産分割は、相続人全員が納得すれば、「遺言」や「法定相続分」と異なっても有効です。
但し、民法906条は、財産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況、その他一切の事情を考慮して遺産分割しなさいとしています。
つまり、被相続人が町工場を経営し、長男が手伝っていたのであれば、工場を残す方向で話し合うべきであり、相続に身体障害者がいればそれも考慮した話し合いをしなさいということです。
最近の遺産分割の傾向
被相続人の高齢化に伴い、次のような傾向が顕著になっています。
- 被相続人の扶養・介護に関連して親族間に紛争が起り、将来の相続問題を複雑にしている。
- 相続人も高齢化し、遺産をあてにした生活を考え、簡単には譲歩しない傾向にある。
- 相続人の高齢化から、代襲相続案件が増加し、共同相続人の数が増えたり、不在者の生ずる傾向にある。
- 相続人間で、相続開始前後の金銭の移動を巡るトラブルが多く、使途不明金が問題となるケースが増加している。
共同相続人
<行方不明者がいる場合>
失踪宣告の申し立てもせずに遺産分割をする方法があります。
それは、家庭裁判所に申立て、不在者のための財産管理人を選任して貰い、その管理人を参加させて分割協議をするという方法です。
- 「不在者財産管理人選任」の申立に必要な書類や費用等は、ここをクリックして下さい。
<未成年者がいる場合>
- 未成年者の代わりに親権者が遺産分割協議に参加します。
- 親権者が共同相続人又は複数の未成年者の代理人となる場合は、家庭裁判所に対して「特別代理人」の選任申立が必要です。
- 「特別代理人」選任申立の方法・必要な費用や書類等は、ここをクリックして下さい。
<事理弁識能力が欠く者がいる場合>
遺産の範囲の確定に関する問題点
相続の対象となる遺産の全てが遺産分割の対象となる訳ではありません。
例えば、預貯金のような可分債権や金銭債務(借金)がそうです。
他方、代償財産や法定果実のように遺産ではないが、遺産分割の対象にすべきかどうか問題となるものがあります。
具体的には、ここをクリックして下さい。
遺産分割協議書
遺産分割の話し合いがまとまれば遺産分割協議書を作成し、全員が署名と実印押捺をして印鑑証明を添付します。
遺産分割協議書は、後日のトラブルを未然に防止するほか、不動産の相続登記にも必要です。
また、被相続人の預貯金の払戻しを受ける時に必要となる場合があります。
遺産分割協議書には、定型の方式はありませんが、
- 相続人の誰が何を相続したか
- 各相続人の署名・捺印
- 作成日
があれば良いでしょう。
遺産分割協議ができない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立て、判断を仰ぎます。
- 遺産分割調停の申立方法・必要な費用や書類は、ここをクリックして下さい。
遺産分割協議書のサンプル
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