公正証書
公正証書とは
公正証書は嘱託人(依頼者)の嘱託(依頼)により、その嘱託人から内容を聞いて、公証人が作成する書類です。
公正証書の特色は、金銭債権については公正証書の中に執行認諾約款(強制執行されても文句無いよという文言)さえあれば、その公正証書に基づいて強制執行ができるという点です。
逆にいえば、金銭債権以外については、強制執行はできないということです。
つまり、土地建物の明け渡しなどは、公正証書があっても、それでは強制執行はできません。
公正証書のメリット
公正証書には、次のメリットがあります。
- 金銭の支払いについては、公正証書にしておけばいきなり強制執行できる。
- 公正証書は裁判のときに有力な証拠となる。
- 公正証書を紛失しても、原本が公証人役場に保管されている。
公正証書の利用状況
実際には、どんな契約書に公正証書が利用されているかと言うと
- 債務確認(弁済)
- 遺言
- 消費貸借
- 賃貸借
- 保証委託
の順となっており、この5つの法律行為で全体の90%を占めています。
なかでも債務確認および弁済契約書の作成に公正証書が広く利用されています。
狭義の公正証書
普通、公正証書の法律上の用語としては「広い意味」と「狭い意味」に使用されており、広い意味の公正証書は、「公証権限のある公務員が一定の事項につき、公に証明する目的で作成した一切の文書」を指します。
刑法157条に公正証書原本等不実記載罪という長ったらしい犯罪が規定されていますが、これは公務員に虚偽の申立をして登記簿や戸籍簿等の公正証書の原本に不実の記載をさせる犯罪ですが、ここに言う戸籍簿・住民票・登記簿の原本などは、広い意味の公正証書に当たります。
「狭い意味」の公正証書は、公証人が公証人法等に従い作成した文書を言います。
今、説明している公証人が作成する公正証書は「狭い意味」の公正証書です。
公正証書にできる文書
公証人は、当事者の依頼・説明がなされても、それが
- 法令に違反した事項
- 無効の法律行為
- 行為能力の制限によって取り消すことができる法律行為
であるときは、公証人法で禁じられています。
要するに違法又は無効な内容の公正証書は作れませんが、その内容が合法かつ有効であり、当事者が行為能力を制限されていない場合は、全て公正証書を作成できます。
公正証書の効力
公正証書には、次の効力があります。
- 証拠としての効力
- 債務名義としての効力
- 心理的圧迫としての効力
証拠としての効力
一般に文書が証拠資料として扱われる場合は、
- その文書が真正に成立したものか否か(形式的証拠力)
- その文書の内容の信憑性がどうか(実質的証拠力)
が問題になります
公正証書の作成者は公証人であるため、内容はともかく形式的には真正に成立したものと推定されます。
信憑性については、法は何の規定もありません。
裁判上の証言に比べると公証人の前での宣誓や偽証罪の適用は無く、低いものです。
しかし、私人間の話よりは遥かに高度の信憑性があるため、事実上、かなりの程度まで認められているのが現実です。
債務名義としての効力
公正証書を債務名義として強制執行が行えるということです。
公正証書は全て債務名義としての効力が認められている訳ではありません。
公正証書が債務名義として強制執行の対象となるためには、次の2つの条件を満たすことが必要です。
- 金銭の一定の額の支払い又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求であること。
- 執行認諾約款(強制執行されても文句無いよという文言)が記載されていること
執行認諾約款の記載された債務名義を「執行証書」といいます。
公証人役場に行く前に準備すべきこと
- 作成して貰う文書の内容について嘱託人間で決めておくこと。
- 嘱託人およびその代理人の本人確認資料としての印鑑証明書
- 嘱託人が法人の場合は、資格証明書
- 嘱託する事項が遺言等の身分に関連する場合は、関係者の戸籍謄本
- 嘱託する事項が不動産に関連する場合は、当該不動産登記簿謄本
- 公正証書の作成に関する費用との関係で、不動産についての評価証明書
- 代理申請の場合は、嘱託者の委任状と代理人自身の印鑑証明書
公正証書の作成手順
公証役場は、作成した公正証書の正本と謄本各1通を交付してくれますが、強制執行は正本でしかできません。
必ず、債権者側が正本を受け取って下さい。
公正証書の原本は、管轄の公証役場に20年間保存されます。
そして、将来、強制執行を考えるなら、このとき、直ちに公正証書の謄本を相手方に送達する手続きまで取るべきです。
それをしないと、後日、相手が行方不明になったとき送達に苦労します。
公正証書による強制執行
執行証書によって強制執行の申立をするには、
- 執行証書の送達
- 執行文の付与申請手続き
が必要です。
強制執行には執行認諾約款のついた債務名義が必要です。
これを「執行証書」といいます。
「債務名義」とは債務の存在を公証する文書です。
債権者と債務者間で作成された借用書などの私的な文書があったとしても、それは偽造されたものかもしれません。
たとえ真正に作成されていても、その債務は既に弁済されているかも判りません。
債権者が裁判所に訴訟を提起して判決を求めるのも、この債務名義(債権存在の証明力)を獲得するためです
一方、債務者は強制執行手続きの進行を止めるには、債務名義の効力を阻止するものを提出しなければなりません。
債務名義となる文書は民事執行法22条で、下記のとおり限定されています。
執行証書以外は、いずれも裁判所が介在しなければ取得できないものです。
執行証書は、公証役場に債権者と債務者(或いはその代理人)が出頭するだけで作成されますから、裁判所の手続きを要する文書より作成が容易です。
強制執行の申立
執行機関(裁判所又は執行官)に債務名義(公正証書)を提出しただけでは強制執行はして貰えません。
強制執行をするための前提条件として、事前に公証人に
- 債務名義に「執行文」を付してもらい
- 債務名義をあらかじめ、または執行開始と同時に債務者に送達の申請
をしなければなりません。
執行文を付与する理由
執行文というのは、債権者と債務者の間の債権が現存し、執行力を有することを公に証明する文言です。
たとえ確定判決でも、その後の再審によって覆された場合は執行力を失います。
しかし、強制執行機関は、単なる債務名義のみでは、執行力の有無の判断ができません。
つまり、執行力が現在も有することを証明するために必要なのです。
債務名義等の送達
債務名義の送達が要求される理由は、債務者に防御の機会を与えるためです。
債務者も執行手続きに関与させることで強制執行の適法性を担保しているのです。
しかし、強制執行の必要性が生じたときには、既に行方不明となるケースが多いため、送達は原則として執行証書を作成と同時にしておくべきです。
地元の行政書士を有効に活用しましょう。
私たち行政書士は、決して正直者が馬鹿を見ることが無いよう、そのための予防的対策に取り組んでいます。
どのようにすればトラブルを回避することができるのかご提案致します。
紛争やトラブルを未然に回避するには、お早めに相談していただくことが一番の近道です。
消費者問題や相続など、日々の暮らしの中で不安を感じたら、お気軽にご相談下さい。
広島県行政書士会広島支部所属
行政書士 村上 陽一
写真中央が私(村上)です。
両サイドの2人は小中学校の同窓生です。
2008年3月の還暦祝いの際、故郷で撮影して頂ました。
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