包括遺贈
「包括遺贈」と「特定遺贈」の違い
遺言者は、包括または特定の名義で、その財産の全部又は一部を「遺言」で処分することができ、これを「遺贈」と言います。
遺贈には、「包括遺贈」と「特定遺贈」があり、その違いは次のとおりです。
包括遺贈
包括遺贈とは、財産の全部または一部を包括的に与えることをいいます。
「遺言者は全財産の三分の一を長男Aの嫁○○に遺贈する」と言うように、全財産に対する割合を示して遺贈することです。
包括受遺者は、相続人ではないが実質的に相続人の地位と類似しているので、民法上「相続人と同一の権利義務を有す」としています。
従って、包括受遺者は積極財産だけでなく消極財産も承継し、遺産分割協議から除外されませんし、相続放棄をする場合は家裁への手続きが必要です。
しかし、法定相続人ではないので遺留分はありません。
(包括受遺者の権利義務)
第990条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
<特徴>
- 遺産分割協議の対象となります。
- 受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
被相続人が有した権利義務の一切を承継し、債務も承継します。 - 遺贈を放棄するには、相続を知ってから3ケ月以内に家庭裁判所へ申述せねばなりません。
- 登記をしないと、包括受遺者は第三者に対抗出来ない。
- 法人でも包括受遺者になれる。
- 農地の包括遺贈の場合は知事の許可(農地法3条)は不要とされている。
特定遺贈
特定遺贈とは、遺贈する財産を具体的に特定し遺贈する方法です。
「甲土地の三分の一を遺贈する」とか「A銀行の預金全部を遺贈する」と言ったように、特定の不動産や金銭財産を、割合を示して遺贈することです。
<特徴>
- 遺産分割協議の対象から除外されます。
- 受遺者は、何時でも遺言執行者又は相続人への意思表示により遺贈を放棄できる。
- 遺言者の債務は承継しない。
- 農地の特定遺贈の場合は、受遺者が相続人であっても知事の許可は必要とされている。
<注意>
- 「包括遺贈」・「特定遺贈」のいずれの場合も、受遺者が被相続人より先に死亡すると遺贈の効力は生じません。(民法第994条第1項)。
この場合は、亡くなった受遺者の相続人は代襲相続しません。
遺言者の相続人が相続します。
そのため、遺言書に受遺者が遺贈の効力発生前に死亡した時は、この財産を誰に遺贈するかを補充記載する(補充遺贈と言う)ことがあります。
遺贈と死因贈与の違い
死因贈与は贈与という契約の一種ですが、遺贈と同じ機能があり、民法も「その性質に反しない限り、贈与に関する規定を準用する」と定めています。
一般に、遺贈の効力に関する規定は準用されますが、遺言の「能力・方法」、「承認・放棄」や、「包括受遺者の規定」は準用されません。
死因贈与は、普通の契約書の形式でも有効です。
従って、自筆証書遺言としては無効な場合でも、死因贈与契約の成立を認めた判例もあります。
方式を欠く自筆証書遺言を死因贈与として救済する余地があります。
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