悪質商法に騙された、訪問販売で思わぬ高額の契約をさせられた。こうした対応にはプロの知恵を活用しましょう。

訪問販売

訪問販売取引とは  

訪問販売取引  

訪問販売とは、販売業者又は役務提供業者が消費者に対して、原則、営業所等以外の場所において指定商品指定権利又は指定役務について、契約の申込を受け又は契約を締結する取引形態をいいます。(特商法2条1項)

  • 取引主体は、販売業者又は役務の提供の事業を営む者
  • 取引場所は、原則、営業所・代理店その他の経済産業省令で定める場所以外の場所
  • 取引品目は、指定商品指定権利指定役務
  • 取引行為は、上記取引品目に関し、その販売の申込を受け又は契約を締結し、或いは指定役務を有償で提供する契約の申込を受け又はその契約を締結して指定役務を提供することです。

訪問販売は、原則として営業所等以外の場所で個人に販売をした場合ですが、

  • キャッチセールスと呼ばれる同行型販売
  • 目的を告げずに特定の客を営業所に呼び込むアポイントメント・セールス
  • 体験モニターと称して高齢者を営業所に集めて体験させた後、高額商品を売りつける

等、不意打ち的勧誘やおとり商品取引の場合は、たとえ営業所内での取引であっても規制の対象としています。

特定商取引に関する法律(以下「特商法」という)は、こうした商取引にクーリング・オフを適用して消費者を強力に保護しています。


クーリング・オフの効果  

特商法に基づくクーリング・オフは、消費者保護の強行法規であり、民法の

  • 解除による損害賠償(民法545条の3)
  • 債務不履行による損害賠償(民法416条)

は適用されません。
消費者は何の負担も無く解約ができて、損害賠償等の請求もされません。

損害賠償・違約金  

消費者はクーリング・オフの権利行使をした場合は、何らの負担もなく、損害賠償又は違約金を請求されることもありません。
事業者は

  • 解除により返品された商品が使用・消費により再販売できなくなったことによる損害
  • 契約締結に使った営業費用・手続き費用

を損害賠償又は違約金その他名目の如何を問わず、消費者に請求できないのです。


原状回復費用  

特商法9条4項によりクーリング・オフがあった場合、その売買契約に係る商品の引渡し又は権利の移転がなされているときは、その取引又は返還に要する費用は販売業者の負担となります。

そして、販売業者は消費者から受領した代金の返還義務があります。
この義務を拒否したり遅延させれば行政処分の対象となります。(7条・8条)

(参考事例)  

訪問販売による住宅リフォーム契約の場合で、業者が価格値引きを条件に消費者から「クーリング・オフをしない」とした合意書面(特約)を提出させていたとしても、法定期間(8日)以内のクーリング・オフは有効です。

従って、消費者に代金支払義務は無く、既に工事が完了し代金を支払っていれば、その返還を求めることができます。


不当利得  

商品の売買契約のクーリング・オフの場合、消費者が当該商品を使用しその利益を受けたとしても、それを不当利得として販売業者に返還する義務はありません。


クーリング・オフの対象商品  

訪問販売クーリング・オフ対象商品は、指定商品指定権利指定役務です。
これは特定商取引法施行令に詳しく規定されています。

指定商品は、特商法施行令3条1項 別表第1に、
 「動物および植物の加工品」など計57品目
を例示的に掲載しており、市販されているほとんどの商品が該当します。

指定権利は、特商法施行令3条2項 別表第2に次の3項目を指定しています。
 (殕椶里燭瓩了楡澆泙燭魯好檗璽鳥楡澆鰺用する権利
 映画・演劇・音楽・スポーツ・写真又は絵画、彫刻その他の美術工芸品を鑑賞し、又は観覧する権利
 8豎悗龍擬を受ける権利

指定役務は、特商法施行令3条3項 別表第3に「庭の改良」など20項目を指定しています。


クーリング・オフの対象外商品  

乗用自動車(特商令4条)
△發箸發氾用対象外の3.000円未満の現金取引(特商令6条)
使用・消費してクーリング・オフできなくなる次の指定商品(特商令5条別表4)

動物及び植物の加工品であって、人が摂取するもの(医薬品を除く)
付織布及び幅が13センチメートル以上の織物
コンドーム及び生理用品
防虫剤、殺虫剤、防臭剤及び脱臭剤(医薬品を除く)
化粧品、毛髪用剤及び石鹸(医薬品を除く)、浴用剤、合成洗剤、つやだし剤、ワックス、靴クリーム並びに歯ブラシ
履物
壁紙

但し、交付書面中に「使用・消費するとクーリング・オフできなくなる」旨の記載が無い場合は、クーリング・オフが可能です。


訪問販売の適用除外規定  

次の取引は、特商法の適用対象外のため、クーリング・オフの対象になりません。

申込者が営業を目的とした取引の場合
日本国外にいる消費者との取引の場合
国又は地方公共団体との取引
組合・連合会などの団体とその構成員との取引
事業者とその従業員との取引
住居において取引を求めた者に対する取引
店舗業者の巡回訪問(御用聞き)による取引
過去1年以内に取引のあった店舗業者の得意先訪問
過去1年以内に2回以上取引のあった店舗外業者以外の者の得意先訪問
10事業所の管理者から承認を得た職域販売


書面交付義務  

法定書面(申込書面・契約書面)の交付義務  

販売業者等は、消費者から指定商品等の申込みを受けたときは、直ちに「申込書面」を、また契約の申込みを受けたときは遅滞無く「契約書面」を交付しなければなりません。

現金取引の場合でも、契約書面の交付義務を課しています。(法4・5条)
そして、この書面の交付日がクーリング・オフの起算日となります。(法9条)

つまり、販売業者からの書面の交付が無い場合は、契約は不成立のためクーリング・オフの期間は停止し、何時でもクーリング・オフができるのです。


法定書面の絶対的記載事項  

法定書面は、その交付日がクーリング・オフの起算日となりますが、下記の絶対的記載事項を脱漏した(満たしてない)場合は、法定書面の交付と認めない場合があります。(東京地裁判例)

その場合は、書面の不備が補正されない限り起算日とならず、クーリング・オフの期間は延長されます。

絶対的記載事項
 “稜篁業者等の氏名(4条5号)
 契約の目的物(4条5号)
 7戚鸞絛癲複款鬘厩罅
 し戚鵑陵行時期(4条3号)
 シ戚麁時(4条5号)
 クーリング・オフ(4条4号)


任意的記載事項  

特商法は、消費者に不利益な特約を付しても無効としています。

÷赱喘簡歙嫻い亡悗垢觧項

  • 事業者等は、「瑕疵担保責任は負わない。」とした記載は許されず、たとえ特約をしても無効です。

合意解除に関する事項

  • 消費者から契約解除することはできないとする消費者に不利益な定めはできません。
  • 中途解約を禁止した特約も消費者に不利なため無効です。


クーリング・オフの方法  

方法  

クーリング・オフの行使は、書面によるとしています。(特商法9条)
但し、最近の判例は、口頭による場合も有効と認める傾向にあります。

法定期間  

訪問販売の場合は、原則、法定書面の交付を受けた日を起算日として8日以内です。

発信主義  

クーリング・オフは、書面を事業者に発信したとき、その効力が発生します。(9条2項)

営業所の記載虚偽の場合  

クーリング・オフの書面を、契約書に記載された事業者の営業所に発信したが、虚偽のため返送されてきた場合も発信の効果が生じます。

注意事項  

クーリング・オフは、後日のトラブルを防止するため発信日時が証明できる配達証明付の「内容証明郵便」を利用しましょう。


クーリング・オフの法的効果  

特商法は、クーリング・オフの権利行使について、次の規定をして消費者保護を徹底しています。

  • 損害賠償又は違約金の支払い請求を禁止(9条3項)
    事業者側は、返品された商品が使用・消耗のため再販できなくても消費者に請求できない。
  • 商品等の原状回復費用は販売業者の負担とする(9条4項)
    既に消費者に引き渡された商品の回収費用は事業者負担となります。
  • 事業者は履行済みの役務の対価その他の金銭や消費者が権利行使により得られた利益に相当する金銭の支払を請求することができない(9条5項)
  • 契約に関し支払った金額は、消費者が返還を請求できる(9条6項)
  • 工作物の原状回復費用は事業者の負担とする(9条7項)
  • これらの規定に反する消費者に不利な特約は無効である(9条8項)


クーリング・オフの妨害と期間延長  

平成16年の改正で設けられた追加規定で、たとえ交付書面にクーリング・オフの記載があっても、消費者に対してクーリング・オフの行使を妨害する行為(不実を告げ又は威迫)があり、消費者が誤認又は困惑してクーリング・オフをしなかった場合は、法定期日の8日を経過していても、消費者はいつでもクーリング・オフができることとしました。(特商法9条1項1号)

事例

  • 契約した時、化粧品の一部を開封して使っているため解約できない。(不実の告知
  • 印鑑を彫り始めたので契約を解約できない。(不実の告知
  • クーリング・オフをするとブラックリストに掲載するぞ。(威迫

但し、改めてその事業者が消費者に対して

  • いつでもクーリング・オフができます」旨の妨害排除のための書面を交付し、
  • 事業者が直接、その旨を口頭で説明

した場合は、その日から8日を経過するまではクーリング・オフができます。
事業者には、書面交付義務だけでなく説明義務も課されているのです。


契約解除  

クーリング・オフ期間経過後の契約解除は、契約当事者間の約定に解除権の記載があれば何時で解約できます。
契約解除の定めは、申込書面・契約書面の任意的記載事項であり記載しなければなりなせん。(特商規則3条8項)

契約解除の内容は、消費者に不利益な特約は排除されます。
特商規則5条1項は「消費者から契約の解除ができない旨の定めが無いこと。」を要求しています。


損害賠償等の額の規制  

特商法10条は、訪問販売により締結した契約を、クーリング・オフ期間経過後に消費者側の債務不履行で解約した場合の損害賠償額についても、販売業者は一定額を超えた損害賠償を請求できないとして、次の制限を設けています。

商品又は権利が返還された場合(特商法10条1項1号)  

  • 通常の使用料の額
    (販売価格から転売可能価格を引いた額が、通常の使用料の額を超えているときはその額)

商品又は権利が返還されない場合(特商法10条1項2号)  

  • 販売価格に相当する額、又は通常の対価

役務を提供開始後の場合(特商法10条1項3号)  

  • 提供された役務の対価に相当する額

商品又は権利・役務の提供前の場合(特商法10条1項4号)  

  • 契約の締結及び履行に通常要する費用の額(例えば印紙税や書面作成料等)

*これに法定利率の年6%の遅延損害金を加算した額を上限として請求できる。

特商法は消費者保護のため民法420条(賠償額の予定)を修正し、損害賠償額の上限を定めています。
この損害賠償額の制限は、民法上の中途解約権を行使した場合に生ずる違約金等にも適用されます。


訪問販業者等の禁止事項  

販売業者等は、次の禁止事項に違反すると行政処分(経済産業大臣および知事の指示命令・又は業務停止命令)、刑事処分の対象となります。

特商法6条記載の各禁止規定に違反した場合は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金(併科)を規定しています。

特商法7条1号は「債務の履行拒否・履行遅延の禁止」を規定しており、消費者がクーリング・オフの行使が可能な時期に通知を出しても「クーリングオフには応じられない」等と拒否したり返金を不当に遅延する行為を禁止行為の典型例として挙げています。

氏名等の明示義務違反(3条)
書面の交付義務違反(4条・5条)・刑事処分
不実告知の禁止(6条1項)・刑事処分
重要事実不告知の禁止(6条2項)・刑事処分
威迫・困惑させる行為の禁止(6条3項)・刑事処分
公衆の出入りしない場所での勧誘禁止(6条4項)・刑事処分
債務の履行拒否・履行遅延の禁止(7条1項)
重要事実の不告知の禁止(7条2項)
迷惑な勧誘・解除妨害の禁止(7条1項)
判断力不足に応じた販売の禁止(7条2項)
適合性の原則違反行為の禁止(7条3項・消費者基本法5条1項)
契約書面に虚偽記載をさせる行為の禁止(特商法規則7条4項)
立ちふさがり・つきまとい行為の禁止(特商法規則7条5項)
誘導開封の禁止(特商法規則7条6項)
指示に違反する行為(7条)・刑事処分
業務停止命令に違反する行為(8条)・刑事処分
訪問販売協会会員詐称(28条)・刑事処分


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